自分定規

「答えは己の中にあり」

私が思う北野映画の特徴とは

お世話になります、ウツシロです。

 

最近北野映画を見る機会があり今更ながら思う事を書いてみる。

説明不要とは思うが念のため北野映画とは、お笑い芸人でもあるビートたけし氏が監督を務める映画の事だ。

北野映画(特に初期作品)は邦画の中でも稀有な存在感を放っている。

国内での評価はそこまでではないが、私は「その男、凶暴につき」から「Dolls」までの作品に北野映画の特徴が顕著に出ているように思う。

中でも私を魅了した作品は「あの夏、いちばん静かな海。」と「HANA-BI」だ。今回は作品のレビューではなく北野映画の大きな特徴を挙げてみよう。

 

1.セリフ、ナレーションの少なさ

北野映画の大きな特徴の1つにセリフの少なさがある。細かい説明を省き見る者の想像力を掻き立てる。「あの夏、いちばん静かな海。」に関しては主人公とヒロインのセリフがない。聾唖者のカップルを題材にした映画は他にもあるのかも知れないがここまで言葉を使わない作品は珍しいのではないか。

本来1番多くのセリフがあるはずの主役にセリフがなく、その他の役者のセリフも多くないという無声映画に近い作品だ。

 

以前私は1日に北野映画と他の邦画を立て続けに鑑賞したのだが言葉の量の違いに驚いた。言葉を極力削ってもストーリーを伝える事が監督の力であり、セリフがなくても間や表情、しぐさで見せる感情表現で伝わってくるものがある。

たぶん、人によっても伝わり方も感じ方も微妙に違うだろう。

監督のインタビューで「あるシーンを撮った時その前後の部分が理解できる絵を撮るべきだ」と語っていた。要するに余計な説明がなくても伝わる絵を意識しろという事だ。

立て続けに観た他の邦画はナレーションやセリフでの説明が多く「くどさ」を感じたものだ。言葉の少なさは視聴者の頭の中で補完する事ができるが、多い場合こちらで削る事ができない。北野映画はストーリーが分かるレベルで絶妙な削り方をしている。

 

Silent Love - Main Theme (ANO NATSU ICHIBAN SHIZUKANA UMI)

Silent Love - Main Theme (ANO NATSU ICHIBAN SHIZUKANA UMI)

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2.全体を覆う暗然たる雰囲気

切なさ、哀愁、悲しみなんと表現したら良いのか分からないが映画全体に漂う雰囲気がある。これは悪い意味ではなく、監督の持つ内面の特徴が出ているのではないかと思っている。このなんとも言えない雰囲気の中に少し笑いの要素を入れるだけで笑いが際立って見える。

ダウンタウン松本人志氏も自分の笑いに対して「少し悲しくないと面白くないんかもしれへんな」と仕事の流儀で語っていたが、この悲しみにも似た空気感の中で笑いが生きてくるのだろう。

この醸し出す雰囲気は他の邦画にあまり感じた事はない。北野映画の特徴と言えよう。

 

もう一つ、編集によるシーンの繋ぎにも特徴がある。シーンの転換にぶつ切り感を感じる事が多いのだ。あえてやっているのか、自然とそうなるのか分からないがぶつ切りで繋ぎ合わせた編集が作品に無機質な印象を与えている。

 

雰囲気には音楽の影響も大きい。特に久石譲氏が担当すると相乗効果が凄い。

映像と音楽で北野映画の雰囲気は更に個性的な物へと昇華されるのだ。

 

Sonatine I - Act of Violence (Sonatine)

Sonatine I - Act of Violence (Sonatine)

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3.北野ブルーと言われる印象的な色合い

青みがかった色彩、画面全体のトーン、小道具の色によく青が使われる事から「北野ブルー」と呼ばれる。

私にとって特に北野ブルーが印象的だったのは「HANA-BI」だ。

これは私の主観になってしまうが初めて「HANA-BI」を観た時「青いなぁ〜」と強烈に思ったものだ。この青みがかった映像は前述の暗然たる雰囲気にも繋がるものがあり北野映画の代名詞でもある。

しかし、近年の作品に北野ブルーと言われる色彩はなくなった。座頭市あたりから画面がカラフルになったように感じる。北野ブルーの終焉と共に商業映画にシフトしていったような印象を私は持っているが、監督の心境や作品に対する考え方の変化がそのまま姿を現すのが作品なのだろう。

 

やはり私はTVタックルより監督の内面を強く感じる初期の作品達が好きだ。

 

 

HANA-BI

HANA-BI

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気になっているがまだ観ていない人には是非初期の作品を観て余韻に浸ってもらいたいと思う。きっと心に残るはずだ。

 

 

今日はこの辺で。